言いたいことがあったのに、言えなかった。

理由ははっきりしている。自分の立場を守ろうとしたからだ。何も言わない方が、自分には得になると思った。

その場は、上の人との質問会だった。普段あまり話さない相手がいて、空気もわからなかった。相手が悪い人だという感じではなかった。それでも、口が開かなかった。

リーダーが、自分に話を振ってくれた。リーダーも自分と同じく、業務委託の立場だ。「せっかくなら」という感じがした。

自分はこう言った。

「今の状況だと何も言えないです。ごめんなさい」

「むちゃぶりしてごめん」と返された。優しかった。それが余計に残った。

よくある言説なら、たぶんこうなる。合理的判断だ、契約を守るのは当然だ、感情で発言しても何も変わらない、と。それは全部、少しは当たっていると思う。沈黙は、その場では合理的だった。

足りないのは、合理性のあとに残るものだ。

もっと戦う言葉や想いを言えたら、と思った。ここまで一緒に頑張ってきたプロダクトを取り上げられたら、という感覚が先に来る。自分の契約より、そっちの方が胸に刺さった。変かもしれない。でも、そうだった。

仮の整理としては、こうだ。立場を守る沈黙は本物で、後悔も本物だった。どちらか一方にきれいな結論をつけない。両方あった、というのがいちばん近い。

まだ保留していることもある。次に同じような場が来たとき、何を言うのか。言えるのか。それはいま、決めきれていない。

ここでは、言えなかった事実と、後悔した事実だけを置いておく。